外来治療で最も頻度の高いものに粉瘤(アテローム)があります。
『脂肪のかたまりができた』
『できものができた』
『しこりができ、触ると痛い』
と訴えて来院される方のほとんどはこの粉瘤です。
皮膚面から見るとドーム状に隆起し、多くの場合腫瘤の頂点の皮膚開口部に一
致して、黒色面ぽう(黒い小さな凹み)を認めます。
小さい物は数ミリから大きい物では10センチ以上に及び、往々にして発赤腫脹や疼痛を生じ(感染性粉瘤腫)、多くはこの状態に至って病院を受診することとなります。
粉瘤は、正しくは粉瘤腫といい、アテロームや上皮嚢腫等いろいろな名称があります。袋状の部分(嚢腫)とその内容物(角質や皮脂などの老廃物)で構成されています。内容物は主に皮膚のアカであり、おから状で乾燥すると粉末になるため粉瘤と呼ばれた次第です。
炎症がない場合は痛みもありませんが、圧迫すると非常に臭い白色の内容物が出てくることがあります。感染が起こると、真っ赤に腫れ上がることもあります(感染性粉瘤腫)。徐々に増大することが多く、成長の速度は個人差があります。
皮下にしこりを触れ、大きくなってきたり、赤く腫れあがったりしていませんか?
急に大きくなったり、感染(化膿)している場合には、早期の治療が必要です。
皮膚や皮下にしこりを見つけた場合には、早めに診察を受けられることをお勧め致します。
当院では、日本形成外科学会専門医(皮膚腫瘍外科指導医)が診療致します。
発生の原因
はっきりした原因は分かっていませんが、ヒト乳頭腫ウイルス(イボウイルス)による感染や、外傷がきっかけになることがあると言われています。
体表にある汗腺の開口部が何らかの原因で詰まり、毛根部や汗腺自体が袋状に拡張し上皮の老廃物や分泌物が貯留して球状になり成長(増大)して行きます。
原因となった汗腺の開口部は皮膚と癒着した黒い点状の陥凹部分(黒色面ぽう)として認められます。
汗腺のある所であれば体表のすべて部位に発生し、背部、項部、臀部に多く、手掌、足底などにも稀に見られます。
全身どこの部位にも発生します。
治療について
手術は、腫瘤部分の皮膚を紡錘形に切り、嚢腫と開口部の皮膚を一塊にして摘出し死腔(空洞)を残さないように皮下組織と皮膚を縫合します。
感染のない場合は簡単に摘出できますが、炎症を生じた場合は、まず抗生物質の内服と外用により炎症をいったん沈静化させた後に摘出手術を行います。
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- 1. 粉瘤のマーキング
粉瘤の部位を確認してマーキングし、皮膚開口部の黒色面ぽうを含めた紡錘形の切開線をデザインします。
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- 2. 局所麻酔
局所麻酔を行います。30Gという極めて細い注射針を用いて痛みを最小限にします。
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- 3. 粉瘤を摘出
デザイン通りに切開して粉瘤を丁寧に摘出します。
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- 4. 真皮・表皮を縫合
十分止血を行い内部に空洞を残さないように、最初に内部の縫合(真皮縫合)を行い、次に表皮を縫合して手術が終了します。
※小さくて浅い粉瘤は、くり抜き法で摘出できる場合がありますが、再発率が高いということは否めません。
- 術後の経過と
注意点 - ●術後2日間は出血しやすいのでアルコールは控えて下さい。
●抜糸まで約1週間は自宅で処置(軟膏塗布)を行って頂きます。
●抜糸までは患部が濡れたり不潔にならないように注意して頂く必要があります。
●手術の内容や術後の状態により術後2~3日後に通院して頂く場合があります。
- 治療に伴う
リスクと合併症
について - ●内出血が起こる可能性があります。
●多少、傷跡は残ります。
●体質によっては肥厚性瘢痕やケロイド等傷跡が盛り上がってしまうことがあります。
●術後の衛生面が悪いと稀に化膿することがあります。
●再発する事があります。
- Q. 悪性化することはありますか?
- A. 悪性化することはほとんどありません。
しかし、極めて稀に中高年男性の臀部に生じた
粉瘤が悪性化したという報告があります。
- Q. 化膿することはありますか?
- A. 細菌が侵入して化膿することがよくあります。これを感染(化膿)性粉瘤腫といいます。赤く腫脹して痛みを伴います。軽い炎症なら抗生物質を内服すれば治まりますが、ひどい場合には皮膚を少し切開して膿みを出したほうがよい場合があります。(切開排膿)
- Q. 必ず手術が必要ですか?
- A. 良性腫瘍なので必ず取らなければいけないということではありません。しかし、徐々に大きくなることが多く、感染をくり返すことも多いこと、さらに極めて稀ではありますが悪性化の報告もあることから、手術で取った方が無難と考えられます。
- Q. 手術の傷跡は目立ちますか?
- A. 切開するので傷跡が全く残らないということはありませんが、傷跡がなるべく目立たないように配慮した治療を行っています。当院では形成外科専門医、皮膚腫瘍外科指導医が手術しますので、傷跡は最小限ですみます。術後はテープ固定をして頂き、傷跡が奇麗に治るように全力をあげて取り組んでいます。
- Q. 再発することはありますか?
- A. 手術では粉瘤を袋ごと完全に摘出する必要があります。
摘出が完全であれば、ほとんど再発しませんが、感染を起こしたことがある場合や、何度も炎症を繰り返している場合は完全に摘出することが困難な場合があるため再発することがあります。
- Q. 治療に健康保険は効きますか?
- A. 診察、術前検査、手術、病理検査、薬剤処方すべて保険が効きます。
- Q. すぐにお風呂に入れますか?
- A. 抜糸までは極力お風呂で濡れないように注意して頂く必要があります。シャワー浴は翌日から可能です。サウナや岩盤浴も抜糸までは控えて頂いた方が無難です。
- Q. 術後アルコールは飲めますか?
- A. 食事の制限などは有りませんが、飲酒は痛みや出血の原因になることがありますので、2~3日控えて下さい。
部位と大きさにより手術費用は異なります。(3 割負担の場合の支払額)
※初診料、術前検査料、麻酔代、手術料、病理検査料、処方料等全て込みの費用(概算)です。
露出部 | |
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長径 2cm未満 | 3割負担時10,520円 位 |
長径 2~4cm未満 | 3割負担時16,570円 位 |
長径 4cm以上 | 3割負担時18,650円 位 |
非露出部 | |
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長径 3cm未満 | 3割負担時 9,400円 位 |
長径 3~6cm未満 | 3割負担時15,220円 位 |
長径 6cm以上 | 3割負担時18,040円 位 |
※1割負担の方は上記金額の1/3となり、2割負担の方は2/3です。
※露出部とは、「顔、頭、首、肘関節から下、膝関節から下」の部位のことです。
※2019年2月現在の金額です。診療報酬の改定により変更となる場合があります。
常に傷痕が最小限に
なるよう配慮しています。
さはら けいいちろう
形成外科・美容外科専門医
資格(学位・専門医)
医学博士
日本熱傷学会専門医
日本創傷外科学会専門医
日本美容外科学会正会員
日本美容皮膚科学会会員
日本抗加齢医学会会員
播磨褥瘡創傷研究会世話人日本形成外科学会専門医
皮膚腫瘍外科指導専門医
美容レーザー適正認定医
日本美容医療協会会員
日本再生医療学会会員
日本レーザー医学会会員
米国テキサス大学Post Doctoral Fellowship(1991~1992年)
豪州メルボルン大学形成外科客員教授招聘(1993年)
院長経歴
1987年 | 川崎医科大学 大学院卒、同大学形成外科学教室入局 |
1988年 | 川崎医科大学皮膚科研修 |
1990年 | 川崎医科大学付属川崎病院形成外科 |
1991年 | テキサス大学形成外科、 シュライナー熱傷病院(SBI)(創傷治癒研究室) |
1993年 | 豪州メルボルン大学形成外科客員教授招聘 |
1993年 | 川崎医科大学形成外科学教室 |
1996年 | 香川労災病院形成外科 |
1997-2014年4月 | 医療法人社団みどりの会酒井病院形成外科・部長(兼務) |
2005-2014年4月 | 医療法人有光会サトウ病院形成外科・美容外科顧問(兼務) |
2007年 | 姫路さくらクリニック。開業 |